新河岸川上流水循環センター見学  2007年11月12日

 昨年の夏ごろから、入曽で放流される還流水の水質が改善しています。この水は新河岸川合流点付近にある新河岸川上流水循環センター(旧称:川越市滝ノ下終末処理場)から送られてくる下水処理水です。
 今回、水質改善の経緯を知るために、新河岸川上流水循環センターへ見学に行きました。
 その場で教えていただいた事についてまとめました。



この施設は、県内で2番目に造られた歴史ある下水処理場です。

昭和39年から川越旧市街地を対象に稼動しており、現在は1日に最大58,000t あまりの下水が処理されています。
 平成10年に”不老川清流ルネッサンス21”による下水処理水還流事業が始まり、水質改善をはかるために、不老川の水量を処理水で補充することになりました。それまで処理場の横に放流されていた処理水の大半は、現在も地下の送水管を通じて約13km上流(高低差約60m)にポンプアップされ、入曽の地点で放流されているのです。(下図)
 ところが、当初は放流水の水質に課題がありました。 砂ろ過・オゾン処理の工程を加えても”清流ルネッサンス”で掲げる目標を達成させるために定められた 放流水の水質をクリアすることができなかったのです。 下水処理過程で、有機物の分解は比較的良好に進んでいるものの、残留するアンモニア性窒素などが酸素と結合すること(硝化作用)で、 BOD値が高くなっていると考えられました。
 平成18年4月、川越市から埼玉県に管理が移され、 それまで場内で処理されていた汚泥が、新河岸川水循環センター(和光市)に移送されるようになると、 当施設での汚泥処理の負担が軽減されました。 すると、下水処理に余力が生じ、手間のかかる硝化促進運転が可能となり、開始されました。
 硝化促進運転とは、硝酸菌を繁殖させてアンモニア性窒素を硝酸性窒素まで変化させる処理技術です。 すでに硝化反応が進んでいるため、放流後には酸素消費が起こりにくくなります。
 その結果、放流水のBOD値は低く推移し始めました。 表を見ると、確かに平成18年9月頃からアンモニア性窒素の濃度とBODの数値が激減しています。 また、この処理場には脱窒のための高度処理設備はないにもかかわらず、 従来の処理設備で技術を駆使することにより、処理水中の窒素分除去の効果もあらわれました。 データから全窒素の値が減少しているのが読み取れます。




 このようにして、放流水(還流水)の水質は改善されたのだそうです。今回の見学で、下水道公社の皆さんの日々の努力を知りました。 (「不老川還流水の水質改善」は平成19年度のいきいき下水道・国土交通大臣賞を受賞)
 今後、富栄養化の要因として削減が急がれている窒素は、 硝化から脱窒の方向で、より高度な処理が要求されることでしょう。不老川の還流事業には多大な尽力と費用がついやされていることを、あらためて痛感しました。

戻る